openSUSE で WireGuard を使って VPN サーバーを構築する
これまで自宅用の VPN はルーターの機能の L2TP/IPSec を使っていました。しかしながら、Android 12から L2TP/IPSec が使えなくなったり、もともと接続元のネットワーク環境次第で接続できないという制約もあり、VPN を WireGuard に乗り換えることにしました。
WireGuard は Linux カーネルに組み込まれている VPN プロトコルで、特にセキュリティとパフォーマンスを売りにしています。
構成はこんな感じです。VPN 接続用の IP アドレスは固定です。
- 自宅側
- ルーター
- ヤマハのダイナミックDNSサービスで IP アドレスを引ける
- VPNサーバー(ファイルサーバー)
- openSUSE Leap 15.5
- LAN側アドレス (eth1): 192.168.10.2(インターネットには直接つながってない)
- VPN側アドレス: 192.168.2.1
- ポート: 51820
- ルーター
- リモート側
- Android 14 スマートフォン
- VPN側アドレス: 192.168.2.2
- Android 13 タブレット
- VPN側アドレス: 192.168.2.3
- openSUSE Leap 15.6 ノートPC
- VPN側アドレス: 192.168.2.4
- Android 14 スマートフォン
秘密鍵・公開鍵を作成する
VPN に参加するサーバーとクライアントそれぞれの秘密鍵・公開鍵を作ります。openSUSE が動いている PC で以下のコマンドでそれぞれ作成します。
wg genkey | tee privatekey | wg pubkey > pubkey
privatekey と pubkey に秘密鍵と公開鍵それぞれが保存されます。合計3回実行することになります。
VPNサーバー側の設定
今回の説明の範囲外ですが、ルーターでポートフォワーディングの設定をしておきましょう。必要なポートはUDP 51820です。192.168.10.2 に転送するようにしておきます。
まずは VPN サーバー自体のネットワーク設定です。WireGuard そのものにはプロトコル上、サーバーとクライアントという関係はなく、どちらもサーバーでありクライアントなシンプルな構成です。後は WireGuard をどのような用途で使うかによって設定が変わってくるため、WireGuard の説明を見るときに、用途を意識してドキュメントを見ないと混乱するので注意が必要です。
今回は自宅で常時起動しているファイルサーバーを VPN サーバーの役割を持たせて、自宅のネットワークにつなぎたい端末からこのサーバーに繋いで使用することにします。ここからはいつもの Arch Wiki に感謝ですが、「特定のユースケース: VPN サーバー」 を見ることで、この用途の設定方法がわかります。
はじめに、転送とファイアウォールの設定です。YaST でやってしまいましょう。
- YaST > 「ネットワーク設定」 > 「ルーティング」を開き、「IPv4 転送を有効にする」をON
- YaST > 「ファイアウォール」 で使用しているゾーンで「ポート」 > 「UDP ポート」 に 51820 を追加
次に、WireGuard の設定をしていきます。wg コマンドで設定する方法もあるのですが、設定ファイルを直接作成するのが手っ取り早いです。
/etc/wireguard/wg0.conf
[Interface]
PrivateKey = VPNサーバーの秘密鍵
Address = 192.168.2.1/24
ListenPort = 51820
MTU = 1420
PostUp = iptables -A FORWARD -i %i -j ACCEPT; iptables -t nat -A POSTROUTING -o eth1 -j MASQUERADE
PostDown = iptables -D FORWARD -i %i -j ACCEPT; iptables -t nat -D POSTROUTING -o eth1 -j MASQUERADE
[Peer]
PublicKey = Android 14 スマートフォンの公開鍵
AllowedIPs = 192.168.2.2/32
[Peer]
PublicKey = Android 13 タブレットの公開鍵
AllowedIPs = 192.168.2.3/32
[Peer]
PublicKey = openSUSE Leap 15.6 ノートPCの公開鍵
AllowedIPs = 192.168.2.4/32
この設定から、VPN 用のインタフェース wg0 を作成します。Systemd を使用して、起動時に WireGuard インタフェースを立ち上げる便利スクリプトの wg-quick を使います。
systemctl enable --now wg-quick@wg0
クライアントの設定―openSUSE Leap 15.6
NetworkManager の接続の追加に WireGuard があり、これで接続できます。入力する必要の値は
- openSUSE Leap 15.6 ノートPC 用の秘密鍵
- ピア(接続相手: つまり、この場合サーバー)の設定
- VPNサーバーの公開鍵
- Allowed IPs (VPN を通して通信するアドレスレンジ)
- LANとVPNのアドレスレンジ: 192.168.10.0/24, 192.168.2.0/24
- 自宅LAN経由でインターネットに出たい場合は 0.0.0.0/0 を指定して、全部を VPN 経由にすることも可能
クライアントの設定―Android スマートフォン
Wireguard の接続アプリは Play Store から入手できます。NetworkManager と同様に手入力でもよいのですが、以下のようなファイルを PC 上で作成して QR コード化して送ることもできます。
[Interface]
Address = 192.168.2.3/24
PrivateKey = Android端末の秘密鍵
DNS = 192.168.10.1
MTU = 1420
[Peer]
PublicKey = VPNサーバーの公開鍵
AllowedIPs = 192.168.10.0/24, 192.168.2.0/24
Endpoint = 外からアクセスできるルーターのホスト名:51820
ファイル名を android-phone.conf とすると、QR コードは次のようにして作成できます。
qrencode -t ansiutf8 < android-phone.conf
qr コマンドでも同じことができます。