自宅サーバーをセットアップした際に、すべてを HDD にインストールしていたのですが、今回、/home と /boot、過去のスナップショットデータ以外を SSD に引っ越しました。このとき、Btrfs のサブボリュームとしての引っ越しをしてみました。

最初に openSUSE の Btrfs のサブボリューム構成についておさらいです。Snapper が有効化された状態のサブボリューム構成は次のようになっていました。Btrfs の / には @ というサブボリュームが1つだけあります。@ の中にマウントしたシステムの / にあるディレクトリに対応したサブボリュームがあります。ちなみに /@ が / としてマウントするのではなく、それぞれのサブボリュームごとに /etc/fstab でマウントしています(例: /@/home が /home)。Snapper を使用している場合は 1 番目のスナップショットが現在の / です。

以下のリストに無い、/@/.snapshots/1/ や /@/boot/grub2/ はサブボリュームではなく、その上にあるサブボリューム内のディレクトリです。

/@
/@/.snapshots
/@/.snapshots/1/snapshot
略
/@/.snapshots/61/snapshot
/@/boot/grub2/i386-pc
/@/boot/grub2/x86_64-efi
/@/home
/@/opt
/@/root
/@/srv
/@/tmp
/@/usr/local
/@/var
/@/var/lib/machines

さて、今回は /@/home と /@/boot/* を HDD に残し、その他を SSD に移動することにしました。パーティション全体であれば、dd で、ファイルレベルであれば rsync と色々な方法がありますが、今回は Btrfs のサブボリュームを他の Btrfs ファイルシステムに転送する btrfs send を使いました。

作ってみたスクリプトを先に貼り付けて、ポイントを個別に説明します。使い方はコピー元を /dev/sda1、コピー先を /dev/sdb1 とし、次のように使います。3番目の引数はスキップするサブボリュームのパターンです。/dev/sdb1 は mkfs.btrfs でフォーマットしてある前提です。
$ btrfs-subvols-copy.sh /dev/sda1 /dev/sdb1 "@/home|@/.snapshots/[2-9][0-9]*|@/boot"

#!/bin/sh

set -eu

exclude=$3

# mounting root volumes
workdir=`mktemp -d`
echo "working directory is '$workdir'"
cd $workdir
mkdir src
mkdir dest

# ルートのサブボリュームをマウントマウントする
echo "mounting root subvolumes of src and dest"
mount -t btrfs -o subvol=/ $1 $workdir/src
mount -t btrfs -o subvol=/ $2 $workdir/dest

src=$workdir/src
dest=$workdir/dest

backup_date=`date -u +'%s'`

# サブボリュームの一覧を出力
for subvol in `btrfs subvolume list --sort=path $src | awk '{print $9}'`; do
    echo -n ">> $subvol: "
    if [[ $subvol =~ $exclude ]]; then
        echo "matched to a exclude pattern, skipped"
    elif [ -e $dest/$subvol ]; then
        echo "the destination subvolume already exists, skipped"
    else
        echo "create readonly tmp snapshot"
        tmpsnap=$subvol.tmpsnap
        # スナップショットを作って送る
        echo "creating a read-only temporary snapshot to send] $src/$tmpsnap"
        btrfs subvolume snapshot -r $src/$subvol $src/$tmpsnap
        echo "copying"
        btrfs send $src/$tmpsnap | btrfs receive $dest/`dirname $tmpsnap`

        # 送信用のスナップショットを消す
        echo "deleting the temporary snapshot: $src/$tmpsnap"
        btrfs subvolume delete $src/$tmpsnap

        # .tmpsnap を外す
        echo "renaming the copied subvolume"
        mv $dest/$tmpsnap $dest/$subvol

        # property を元のサブボリュームと同じにする
        echo "copying subvolume properties"
        for prop in `btrfs property get $src/$subvol`; do
            btrfs property set $dest/$subvol ${prop/=/ }
        done

        echo "done"
    fi
done

echo "unmounting src and dest"
umount $workdir/src
umount $workdir/dest
echo "cleaning up working directory"
rmdir src
rmdir dest
rmdir $workdir

まずは、送信元、先のボリュームのマウントです。

# ルートのサブボリュームをマウントマウントする
echo "mounting root subvolumes of src and dest"
mount -t btrfs -o subvol=/ $1 $workdir/src
mount -t btrfs -o subvol=/ $2 $workdir/dest

送信元と先をマウントするだけなのですが、注意点が1つあります。Btrfs では任意のサブボリュームを選んでマウントすることができますが、何も指定しないと / ではなく、デフォルトのサブボリューム(btrfs subvolume set-default で設定可能)がマウントされてしまいます。特に Snapper を使用していると、1番目の Snapper スナップショットがデフォルトになっていますので、明示的に subvol でマウントしたいサブボリュームの指定が必要です。

次に、送信元のサブボリュームのリストアップです。

# サブボリュームの一覧を出力
for subvol in `btrfs subvolume list --sort=path $src | awk '{print $9}'`; do

--sort=path を指定して、親ディレクトリを含むサブボリュームを先にリストし、サブボリュームのツリー構造の親サブボリュームとディレクトリを先にコピーするようにします(存在しないとエラーになってしまいます)。

次に送信するところです。

        # スナップショットを作って送る
        echo "creating a read-only temporary snapshot to send] $src/$tmpsnap"
        btrfs subvolume snapshot -r $src/$subvol $src/$tmpsnap
        echo "copying"
        btrfs send $src/$tmpsnap | btrfs receive $dest/`dirname $tmpsnap`

btrfs send コマンドを使ってコピーするのですが、送信できるのは読み取り専用のサブボリュームなので、一度スナップショットを読み取り専用で作成し、このスナップショットを送ります。コピーは btrfs sendbtrfs receive のペアで行えます。サブボリュームの名前(パス)は送信元と同じものが作成されます。そのため、スナップショットの名前になってしまうので、あとで mv が必要でちょっと不便です(スナップショットを別のディレクトリに作成する方法もあり)。

注意が必要なことが1つあります。この送り方では Snapper のスナップショットを送れません。Snapper のスナップショットはスナップショット間で共通するデータを共有していますが、この方法ではこの共有が解けて複製されてしまいます。btrfs send のオプションにベースとなったスナップショットを指定し、差分だけを送る機能があるようなので、もう少し工夫すると実現できるかもしれません。

最後に、サブボリュームのプロパティのコピーです。

        # property を元のサブボリュームと同じにする
        echo "copying subvolume properties"
        for prop in `btrfs property get $src/$subvol`; do
            btrfs property set $dest/$subvol ${prop/=/ }
        done

送信前に読み取り専用のスナップショットを作成していますので、読み取り専用を含めた、送信後サブボリュームのプロパティをもと同じに戻します。